身の回りの電磁場
電磁場測定器で遊ぶ
丸山 秀一
1997.3暫定版,1997.10加筆(未完成)
■見えない電磁場をつかまえよう
電磁場は目には見えません。直接には人間の五感では感じることはできません。しかし,電磁場はまわりの空間にあふれています。板倉聖宣先生は,「電磁波をさぐる」(*1)としてサイエンスシアターで「ピッピーポケベル」というおもちゃを使って,たのしい電磁波の実験をたくさん考案されています。しかし,そのおもちゃでは,電磁波の強弱まではなかなかとらえることができません。電磁波というのは「波」なのですから,その強弱がわかるとよりたのしいのではないかと思えます。そう思っているうちに,「簡易電磁場測定器」が比較的安価で入手できることがわかりました。早速それを入手して,とりあえず手当たり次第にまわりの電磁場を測定したのがこのレポートです。
このレポートは,ボクが思いつくままに予想して測定した順番にその予想と結果を書いただけのものですので,まとまりがなく,またまだ完成していないというものですが,この測定器が普及すれば,たのしい電磁波のプランへと発展するかもしれません。ご検討ください。
◎簡易磁場測定器
「ドクターガウス」(【もの】ページ参照)という名前のアメリカのHEALTH MAGNETIX社の簡易磁場測定器を買いました(輸入品)。電磁場の強さが0.1mG〜10mG(G=ガウス)まで測定できるもので7800円。電磁波が測定できるものとしては「ピッピーポケベル」がありましたが,この「ドクターガウス」は,定量的にも調べることができるわけです。ただ測定できるのは,「50/60Hzの商用電気の電磁波のうちの磁場」です。しかし,身の回りの家庭電器製品からの電磁波を測定するには十分でした。なぜなら,電磁波というのは,電場と磁場がかさなりあったもので,どちらの強さを測定しても同じようなことだと思うからです。
磁場の強さ 安全性
0〜2mG 比較的安全
2〜7mG 注意
7mG〜 危険
また,この測定器は「電磁波は健康を害する」ということで,磁場の強さを上の表のように分類していました。この数値が妥当性のあるものなのかどうかは,あとで検討することにして,これからはこの表をもとにして「予想」していきます。
[質問1]デパート・地下街
この測定器はデパートで売っていたものです。売場から早速電磁場の測定を開始しました。電磁場の強さによってメーターが振れて音が出るのですが,この音が結構大きくてちょっと恥ずかしいものでした。ただ測定器のサイズが携帯電話並みなので,周囲の人の注目を集めたときは,さっと耳にやると「ああ携帯電話か」と納得してくれるみたいでした。
さて,デパートの中と地下街(JR札幌駅地下街)をふつうに歩いたときに受ける電磁波は,同じような傾向でした,その強さはどれぐらいだったと思いますか。
[質問2]都会の道路
今度は,地下街から外へ出て,都会(札幌の中心部)の街中を歩くことにしました。そこでの電磁場の強さは,どうだったと思いますか。
[質問3]街にあるもの
街を歩いていて電磁波を出していそうなものを探したところ,次のようなものが目に付きました。さて,電磁波を出しているでしょうか。
・公衆電話機(通話中)
・自動販売機
・アイドリングしている自動車
[質問4]
エンジンをかけている自動車の車内では電磁場の強さはどうなっているのでしょうか。運転席に座ったとして,どれぐらいの電磁波を受けるでしょうか。
エンジンからは,たくさんの電磁波が出ていそうですけど,自動車のボディは金属でできているからそれにさえぎられて車内では電磁場の強さは大したことのないような気もします。でも,「エンジンルームからの有害電磁波をカットする」という商品もあるぐらいですからどうでしょうか。
[質問5]高圧線
高圧線には,高電圧の電流が流れています。それが電磁波を発生させているようなことはないのでしょうか。高圧線の鉄塔の近くで電磁場の強さを測ってみたらどうでしょうか。
[質問6]家電製品
家の中には家電製品がたくさんあります。テレビ,冷蔵庫,洗濯機,掃除機,ラジカセ,パソコン,照明器具,ストーブ,エアコン,電子レンジ,換気扇,アイロン,電気ひげ剃り,ウォッシュレット,電子時計などなど。
以上のような家にある家電製品で使用中の電磁波がほとんど出ていない(測定値1mG以下)だったものがあるでしょうか。また,測定した家電製品の中で電磁波が一番強かったのは,何だったと思いますか。
[質問7]
家電製品の中で,スイッチを入れないのに(コンセントはさしておく),電磁波を出しているものはあるでしょうか。
[質問8]
ほとんどの家電製品は電磁波を出しますが,電磁波は家電製品とコンセントを結ぶコード(電線)からも出ているのでしょうか。壁のコンセントはどうでしょう。電灯のスイッチは?
(質問9)
パソコン用のACアダプターにアルミホイルを巻き付けたら,出てくる電磁波の強さはどう変わるでしょうか。また鉄板で被ってみたときはどうでしょうか。
(質問10)
永久磁石の周りには,磁場があります。測定器をフェライト磁石に近づけるとどういう反応を示すでしょうか。
(質問11)
テレビなどのリモコンは,たいていが赤外線を使っているようです。電磁場測定器は,テレビのリモコンの出す赤外線を感知できるでしょうか。
(質問12)
電子式壁掛け時計からは規則正しい電磁波が出ていました。それでは,腕時計からも電磁波が出ているのでしょうか。
(質問13)
「携帯電話からの電磁波が脳に悪い影響を与えるかもしれない」という記事がよく新聞に載っていたりします。では,携帯電話からはどの程度の強さの電磁波が出ているのでしょうか。また,PHSでは違うでしょうか。
(質問14)
最近の携帯電話の普及で,携帯電話の電波を中継するためのアンテナが街のあちこちにみられるようになりました。さて,それらのアンテナの近くでは,どの程度の電磁波が測定できると思いますか。アンテナの種類によって違うでしょうか。
テレビやラジオ放送用のアンテナではどうでしょうか。
■結果編(未完)
[結果1]
デパートの食品売場を歩いたのですが,かなりの反応がありました。陳列棚などに近づくと,針が振りきれることもよくありました。どうも陳列ケースの蛍光灯からの電磁波に反応しているようです。ただ,まわりに陳列棚などのないところでも,場所によっては針が振りきれるところもあり,電磁波の集中するような場所がたくさんあるようでした。
[結果2]
外に出ると驚くことに,電磁波を全く感知しなくなりました。店先のショーウィンドなどに近づくと反応しますが,ふつうに歩いていたのでは,全くと言っていいほど感知しません。車道には,車が溢れているのに,車からの電磁波もそれほどではないようです。
ただ一度,バスが通り過ぎたとき,測定器がかなりの反応を示しました。「バスには反応するのか」と思って,バスが通り過ぎる度に測定しまたが,それ以降は反応がありませんでした。無線でも使っていたのでしょうか。
歩道には,ところどころに電気か何かの設備だと思うのですが,丈夫な金網で囲われた設備があります。それに近づくと,かなりの反応がありました。
[結果3]
電話ボックスの中の電話機は通話中でも全く反応しませんでした。自動販売機は,照明の蛍光灯を消してあっても,かなり反応します。エンジンをかけて止まっている自動車のまわりを調べてみると,エンジンルームのあたりでだけ強く反応しました。
[結果4]
測定してみる(スターレット)と,ダッシュボードやペダルの部分からは,かなり強い反応があります。針は振り切れています。運転席に座ったとして,頭や顔の部分では5mGほどの強さです。ハンドルを握る手には,10mG以上の電磁波が来ています。
おもしろいのは,右側後席で強い反応(針は振りきれる)があることです。左側の後席では,ほとんど反応がありません。後席右側に電磁波を出すようななにかがあるのかというと,なにも見あたりません。だいたい空中で最強値となるのです。車外に出てみても,車外ではこのあたりには反応がありません。どうやら車の形状に関係して,そこに強い電磁場ができるようです。(凹面鏡での焦点のようなものか?) ボクは,この後席右側にチャイルドシートを置いて子どもを乗せているので,ちょっと電磁波の影響が心配になりました。また,運転者は強い電磁波をあびているわけですから,なにか体に影響が出るのかも知れませんね。
「ギメルオート」という「電磁波をカットする」がうたい文句の商品の効果を調べてみましたが,その効果は電磁波強度の差としては,全くわかりませんでした。
[結果5]
自動車を運転していて,突然メーターの針が振りきれることがありました。外を見ると,高圧線の下を通過したことがわかりました。何度か高圧線の下を通過しましたが,メーターはいつも振り切れました。車外ではもっと強度があるのかも知れませんが,メーターが振り切れてしまうのでその測定はできませんでした。また電化されている鉄道線路の上を通過する道路を通ったときは,車内では全く反応しませんでした(車外では測定していない)。
[結果6]
さて,家にある家電製品を片っ端から測定してみました。なお測定器の説明書に則って,電磁波レベルが強いものを「危険」「心配」などと表現することにしますが,根拠があるかどうかは,後ほど考えることにします。
まずは,蛍光灯です。蛍光灯をつけるとラジオに雑音が入ることがあるので,電磁波を出しているに違いないと思いました。測定器を近づけると強い電磁波が測定できました。しかし,ε0センチも離れるとほとんどゼロです。おもしろかったのは,蛍光管を抜いている照明器具でも,スイッチを入れると強い電磁波が測定されたことです。白熱電灯では,電磁波をほとんど感知できませんでした。
家電製品では,ほとんどすべてのものから電磁波を測定することができました。電磁波が特に強いのは,モーターがついている家電製品のようで,掃除機や電気ひげ剃り(充電式)からは,強い電磁波が感知されました。電磁波が危険だとすると,電気ひげ剃りはちょっと怖いかも。まあひげ剃りの時間はわずかですが。おもしろかったのは,浴室の換気扇です。ε0センチまで離れないと電磁波レベルが弱まりません。洗い場ではふつう座りますから,その高さでは「安全」です。
また特に驚いたのが電子レンジです。ε0センチ離れてもかなり強い電磁波が測定できました。その強さはテレビなどと同じですが,電子レンジは近くで操作するものですから,ちょっと心配。同様に,アイロンも心配です。
冷蔵庫では,コンプレッサーが動いていないときは,ほとんど電磁波が感知できませんが,ひとたび動き出すと,左右方向にε0センチの「危険地帯」ができます。方向によって電磁波の強さが違うのはテレビも同じで,前面よりも,背面や左右方向に強い電磁波が感知されました。
パソコンの電磁波は,予想以下のものでした。特にデスクトップタイプのパソコンでは,ふつうに操作するのであれば,操作する人間が受ける電磁波は,わずかなものでした。ただし,ノートタイプでは,キーボードがある本体から強い電磁波が出ており,手が常時それにさらされているわけですから,問題があるかも知れません。ボクはずっと,「デスクトップ型よりもノート型の方が電磁波に対しては安心」と思っていたので,これは意外でした。
パソコン用の電磁波防止グッズとして「OAエプロン」などが売られています。この効果はあるのでしょうか。調べてみると,ブラウン管の前でそのエプロンを通して電磁波を測定すると,電磁波のレベルが1〜2mGほど低下しました。少しは効果があるようです。電磁波の胎児に対する影響が特に心配されていますので,ボクの女房も妊娠中は,いつもこれをつけてパソコンをしていました。
ウオッシュレットもなかなか強い電磁波を出していました。長く便座に座る方には,よくないかもしれません。
[結果7]
ビデオデッキのようにタイマーがついているものは,スイッチを切っておいても電源を入れてあるのと同じですから,みんな強い電磁波を出しています。赤外線リモコン式の掃除機もそうでした。
でも家電製品の中には,タイマーなどがなく,スイッチも入れていないのに電磁波が測定されるものがあって驚きました。まずCDラジカセがそうでした。コンセントにプラグをさすだけで本体から強めの電磁波が出ています。ほかには,全自動洗濯機がそうでした。この理由はわかりませんが,説明書にもはっきり「スイッチOFFでの消費電力5W」などと書かれています。
[結果8]
何もプラグを差し込んでいないコンセントからは電磁波は出ていないようです。プラグを差し込むとかなりの量が出ています。電気のコードからは通電中でも電磁波は検知できませんでした。
照明のスイッチなども家庭用のものは電磁波を感知できませんが,ひとつのスイッチでたくさんの電灯を制御するようなものからは,電磁波が出ています。
[結果9]
ACアダプターからは,強い電磁波が出ています。アダプターをコンセントに刺すだけで検知されますので,不要なアダプターは抜いた方が賢明でしょう。アダプターをアルミホイルで被っても電磁波のレベルは変わりません。鉄板で被っても同じです。電磁波のうちの電気成分は金属に反射させられてしまうはずですが,磁気成分は金属も通り抜けてしまいます。
このように電磁波は,ほとんどすべてのものを貫通しますので,僕の住んでいるアパートでは,隣の住人のテレビによる電磁波などが部屋の中に入ってきているのがわかります。
[結果10]
永久磁石に測定器を近づけるとおもしろい現象が見られます。永久磁石のそばで測定器を動かすか,測定器のそばで永久磁石を動かすと電磁波が測定されるのです。電磁波とは,振動する磁場や電場が生み出すものですから,まさに電磁波の誕生を実感できるわけです。
永久磁石と測定器の関係が静止した状態だと,電磁波は何も感知されません。
また測定器自体を振動させると,測定器には電磁波が感知されます。これは,測定器自体が電磁波を発生させたということなのでしょう。
[結果11]
測定器では赤外線は感知できません。赤外線も電磁波の一種ですが,周波数が違いすぎるのです。この測定器は50〜60Hzを感知するのに対して,赤外線の周波数は3×1013Hzもあるのです。同様にこの測定器では可視光線やマイクロ波,ふつうの電波などを感知することもできません。
[結果12]
電子式の時計からはすべて規則正しい電磁波が出ています。しかし同じ電子式でも,針のないデジタル時計からは電磁波は出ていません。どうも針を動かすモーター(?)を動かしているときの電磁波のようです。腕時計は直接身につけるものですから,アナログの電子式腕時計をつけているひとは,常に規則正しい電磁波をペースメーカーのように身体に受けているわけです。
◆以下未完◆
最新の研究状況は【研究棚】にて
■参考文献
*1 板倉聖宣編著『電磁波をさぐる=電波と光の世界』サイエンスシアターシナリオ集,板倉聖宣研究室,1995.4.8,
電磁波の安全性について
徳丸仁『電波は危なくないか 心配される人体への障害』講談社ブルーバックス,1989.4
ここをクリックすると【研究棚】のページに戻ります。
ここをクリックすると【レポート】のページに戻ります。