第三部

◎ 以下は後述する板倉先生の著作から筆者がまとめたもの。文責は筆者にある。どう構成していったらよいのかまだ思案中である。


■ 転換した日本の教育

◎進学率・卒業率の推移 →グラフ
 1975年が転換期。経済の高度成長も止まる。

 ・明治前  国民教育のみ 寺子屋
   国民教育=「読み・書き・計算」
   確実に役に立つ知識を学ぶことはたのしい。
 ・明治以降 学校で国民教育+教養教育(専門教育)
   教養教育の増大と有効性への疑問
 (高校教師は高校での知識を生活に使うか)
 [エジソンと数学,社長になるための教育]
 「役に立たない知識を学ぶことに意義があるのか」→学習意欲の減退
 この「学習意欲の減退」を「必然的なもの」と考えいとおかしくなる。こんなときに昔と同じ退屈な勉強をするものはどこかおかしい。

◎学歴主義によって支えられた学習意欲
 学習意欲:教育にとって一番大切なもの
 学歴主義の崩壊→競争原理を拒否。進学率が止まる
        進学率あがっても卒業率は停滞
 学歴社会が終わったのではなく,学歴に価値がなくなった。

◎転換期の教育
 教育も転換が必要。生徒数も減少。
 これからの教育は「学びたい」という生徒が相手ではない。

■不登校の何が問題なのか
◎変わるべきは生徒か学校か
 ・増加は止まらない  明るい傾向
  全国で同様に増加。
 ・文部省の方針転換(「児童の権利に関する条約」?)
  50%出席で単位認定。不登校50日を30日へ。
 ・明治期の通学促進実験
   石川県代表  強制的に登校させる。
   長野県代表 「学校へ行って良かった」
          と思えることが先。
  板倉聖宣『かわりだねの科学者たち』仮説社
 ・不登校は「学校改革への要求」→未来は明るい
 ・「昔は良かった=時代を戻す」という発想が間違っている

◎登校受諾率100%がいいことなのか
 ・登校受諾率はまだ高い
 ・なんでも100%を目指すのは間違い
  教育の多様性
 落ちこぼれることができないオウム
 登校拒否はたのもしい
 教師の子どもに多い登校拒否

◎日本社会が求める創造性
 ・「模倣の時代」は終わった
 ・学歴主義等による外発的動機づけで創造性は育つか
 「エリート養成」の意義
 「たのしい」と思える内発的動機が創造性のもと

■未来の教育
 ・教育の主役は子どもたち
 (言葉だけでない)徹底した子ども中心主義の教育
 「学校不適応」という言葉はおかしくないか
 学校が「生徒不適応」をおこしている。
 ・たのしくなければ授業ではない
   授業のたのしさは教育の手段ではなく目的
 ・たのしい授業の実現
   教師や文部省や組合ではなく,教育研究者の課題。
    教材の積み上げ。
   仮説実験授業研究会,『たのしい授業』(仮説社),
   法則化運動,科学教育研究協議会など

 なぜいま教育の話題が暗いのか。かつては教育は立身出世のための希望だったから明るかった。

■謝辞
 このレジュメは,国立教育研究所名誉所員の板倉聖宣先生の教育問題に対するすばらしい発想とグラフを元にして作ることができました。もともとは官制の研修会で「不登校について提言せよ」と言われて作ったものです。初めは,「板倉先生のデータに最新のものを加えよう」と思っていただけなのですが,ついのめり込んでしまいました。しかしまだまだデータが十分でないのと,板倉先生のようなグラフが書けないことがとても不満です。

■ 出典・文献
・文部省のホームページhttp://www.monbu.go.jp/stat/jmstat.html
 に「各種統計情報」としてデータがあります。しかし,不登校者数のデータは小学校と中学校分のみの平成10年分だけしか公開されていません。

・『文部統計要覧』 2000.1版 700円
 これには求めるデータが無くてがっかり。長期欠席者のデータはあるのですが,そのうち不登校者数がはっきりしているのは平成10年度ののみ。これでは過去のも取りそろえなければならない。
 さらに「進学率」「卒業率」を計算してみると,どうもこの『要覧』の数字と合わない。なぜだ???要検討。

・板倉聖宣先生の著作
 以下の講演記録がまさにぴったりの内容です。「高校への進学率・卒業率と4年制大学の卒業率」「日本の小中学生のうち〈学校ぎらい〉による長期欠席者の変遷」というグラフもあります。とりあえずは,これらのグラフにここ数年のデータも付け加えようと思っています。

・板倉聖宣 「教育の未来に向かってオーム真理教から教育を考える」 1995.11.18 日高教育会館での講演記録
 『1996たのしい授業フェスティバル&入門講座』ガイドブック 兵庫仮説実験授業研究会 1996.3.26
 さらに『たのしい授業』のバックナンバーを調べていて,以下の文献を発見。

・板倉聖宣 「校内暴力・いじめ・登校拒否のその後」グラフで見る世界116 『たのしい授業』No.193
 『文部統計要覧』では登校拒否数のデータが得られなかったので,「板倉聖宣先生はどこから入手したのかなぁ」と思っていたら,この記事に詳しく書いてありました。それは
 文部省 『生徒指導上の諸問題の現状と文部省の施策について』 1997
という一名『問題行動白書』からの数字なのです。
 ただここでの登校拒否数の数字がボクが持っているデータと異なります。それは板倉先生のグラフのデータは,「50日以上欠席しているもの」だからです。文部省は平成2年度までは,「50日以上欠席のもの」の集計をしていましたが,平成3年度からは「30日以上欠席のもの」として調査しているのです。そこでボクも「50日以上」に統一してグラフを作ることにしました。

・板倉聖宣 「図表に見る日本の教育」グラフで見る世界72 『たのしい授業』No.142
・板倉聖宣 「図表に見る日本の教育」 「週刊朝日百科 日本の歴史103 近代I 4 学校と試験」 1988
 上記二つは同じグラフであるが,『たのしい授業』の解説が詳しい。「週刊朝日百科」には,「明治期における学齢人口の就学率・通学率の変遷」のグラフもある。

・板倉聖宣「未来の学生・生徒数の予測」グラフで見る世界99 『たのしい授業』No.173
     生徒数の変化も考えなければなりません。

・板倉聖宣「〈たのしい授業〉の学校史的意義」『たのしい授業』No.101

・板倉聖宣 「自分の判断で行動する人の時代 登校拒否児の増加は明るい社会の前ぶれ」
 『たのしい授業』No.187 『教育が生まれ変わるために』(1999.8)にも収録。

・板倉聖宣 「校内暴力とたのしい授業の必要性」『教育の未来に向けて』1995.8

・板倉聖宣 「〈高校を中退してよかった〉という高校中退生」『たのしい授業』N0.109
 『仮説実験授業の考え方』(1996.12)にも収録

・『知識・情報 imidas2000』 集英社
 類書の中で『イミダス』だけが不登校数変遷のグラフが載っていました。これは「30日以上欠席」のものです。ただ数字のデータがありません。

・『日本国勢図会』
 これにも載っていました。「50日以上欠席」のデータです。しかしちょっとおおまかなデータ。CDROM版もあるけど,そちらには詳しいデータが載っているのであろうか。

・不登校のホームページ
 「不登校」で検索したら十万のホームページが検索されて驚きました。大問題なんだなぁ・・・。今度は「登校拒否」で検索してみよう。登校拒否では5000件でした。

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