〈錬金術入門〉覚え書き
数年前からメモしていることを,公開いたします。授業にお役立てください。
★「金属イオンの色がとってもきれい」
〈錬金術入門〉をやっています。金属が溶けた溶液の色がとってもきれいでうれしくなってきます。金属が溶けて行くときの様子を模型か何かでもっとイメージできれば,もっとよいと思います。
★王水に金を溶かす
授業書に出てくる「金属溶解液」では金は,なかなか溶けません。金を溶かすには「王水」だということを子供のころから知っていましたが,金がなかなか入手困難なためやらずじまいでした。今回,「原子の標本」などをはじめたおかげで,僕のところには,ほとんどの金属単体があります。もちろん金も金箔で100枚も買いました。
そこで初めて王水を作って,金を溶かしてみることにしました。王水は,塩酸と硝酸を適当に混ぜて作りました。そして,その中に,金箔を入れました。しばらくみていましたが(15秒ぐらい),金箔は,溶ける様子がありません。「なんだ王水でも時間がかかるのか」と思って,ほかの作業を1分ぐらいやってから,もう一回見てみると,なんと金箔は,綺麗に溶けてなくなっていました。溶ける感じがしなかったのは,気体が全く発生している様子が
ないからです。しかし,ちゃんと溶けてしまうのです。溶液の色は,オレンジ色に近い色です。鉄を溶かした溶液と比べると,やはりきらめきがあって,「金を溶かした」という感じがしました。
明日は,もっといろいろな金属単体を溶かしてみるので,どうなるかたのしみです。コバルトの溶液は赤だというので,たのしみです。
★「絵の具を作る」というプランをずっと考えています。金沢高校の四ヶ浦さんの〈分析学入門〉というプランは,それに近い内容で,とってもたのしみにしています。大会で発表することを目標に頑張っておられます。
★続「金属イオンの色がとってもきれい」
金属溶解液(塩酸+過酸化水素水)に様々な金属を溶かしてみました。
・銀
金属溶解液にわりと簡単に溶けます。でも,泡があまりでなく,知らないうちに溶けるという感じ。溶液の色は,透明。
・コバルト
たのしみだったコバルト。予備実験ではワインレッドになりました。でも「コバルト・ブルー」という色があるから,青なのではないかと気になっ ていました。教室でやってみると,なんときれいな青になりました。「おかしいな」と思いつつも,「銅イオンの場合と同じでは」と思って薄めてみると,やはりワインレッドの色になりました。銅も金属溶解液に溶かすと,緑色になりますが,その液を薄めると,きれいな青色(硫酸銅の色)になります。薄めることによって,色が変わるのは,錯イオンができたりするからでしょう。(色の勉強をすると分子の結合状態で色ができるそうです。)
・チタン
かなり反応が遅いのですが,鉄に似た色になります。オレンジに近い色で薄めると黄色になります。
・モリブデン
なかなか溶けませんが,薄い緑色です。
・鉛 薄い緑色
・マンガン 大変激しく反応して,薄いピンク色
・ニオブ 薄い緑色
・ビスマス,インジウム 透明
・タンタル,タングステン ほとんど溶けず
★ほかの金属でもやってみようと思っています。
ただ,有毒な金属や酸に溶かすと有毒になる金属もあって,ちょっと今日は止めておきました。
★換気に注意
この授業では,塩素ガスが発生します。直接吸うと粘膜にかなりの刺激があります。
今日は強い雨の日だったため,窓を閉めて授業していたところ,生徒さんから苦情(気持ちが悪い,のどが痛いなど)が殺到しました。廊下側は,ドアも窓も開けていて,換気扇も回していたのですが・・・。
★授業書に出てくるアルミニウムも不思議です。溶けているときは黒っぽい色に見える
のに,溶けてしまうと透明です。
★クロムイオンの色
授業書には「クロムは藍色のイオンになる」とありますが,純度の高いクロムで,何度やってみても,大変薄い黄色になるだけ(ほとんど透明)でした。へんだなぁ。
★「お金の材料と合金」という頁
があって,円グラフで銅,亜鉛などの構成比を表しています。ここで,各金属のイオンの色でぬり分けるとたのしいことを発見しました。銅は緑,亜鉛は無色だからぬらない・・というようにぬってゆくのです。そうすると,そのお金を金属溶解液に溶かしたときの色が予想できるのです。たとえば,100円硬貨なら,銅とニッケルで緑と黄色ですから,「緑に少し黄色がまざったいろ」というように。
★白銅を金属溶解液に溶かすと
白銅と黄銅を溶かす実験が授業書にありますが,みなさんは何を溶かしていますか。今回は,白銅線と黄銅線を買ってみたのですが,やはりいまひとつ迫力に欠けます。やはり百円硬貨や五円玉を溶かしたい。法律違反だけど。
ただこの実験,「銅を溶かしたときと同じ色」になるのが答えなのですが,銅イオンの色は,薄いときは青なのでこまってしまいます。つまり百円玉(白銅線ですよ)を溶かしても,青い色の溶液になってしまうのです。時間がたてば,たくさん溶けて緑色になりますが,ちよっと困ったものです。
そこで予備実験。一度金属溶解液につけた硬貨(白銅線)を使えば良いのです。あっという間に溶けて(塩酸を多めに入れる),きれいな緑色になって,「銅の時と同じ色だ」で一件落着。
★ニッケル板に注意
「ニッケルを溶かす」というところは,昔の50円玉(Ni100%)を溶かすのですが,もったいない(150円もする)ので,電極用(メッキ用)のニッケル板を溶かしていました。すると,ちょっと違った反応になるのです。
50円ニッケル硬貨の場合は,なかなか溶けません。そして薄い緑色の液になります。ところがニッケル板だと,すぐに溶けてレモン色の液になるのです。「へんだなぁ」と思っていましたが,そのまま使っていました。そして黄血塩をいれてみたのです。黄血塩をいれると,鉄や銅の検出が容易にできます。ニッケル硬貨の場合は,黄色の液(黄血塩の色)となります。ところがニッケル板を溶かした液に,黄血塩をいれたときは,一瞬青くなる(鉄イオンの反応)のです。
これでわかりました。ニッケル板には鉄もまじっていたのです。だから金属溶解液に溶かしたときに,鉄の黄橙色がまじってレモン色になっていたわけです。実験にはニッケル硬貨を使いましょう。その後純粋なニッケルを入手しました。
★鉄分の検出
金属溶解液に溶かしてから,黄血塩を入れることで鉄分の検出ができます。
さて,次のものは鉄分が検出されたでしょうか。
予想
ア はっきりと検出された
イ かすかに検出された
ウ 検出されなかった
1 ほうれんそう,2 明治LOVE牛乳,3 花壇の土,4 砂,5 「鉄骨飴」,6 「鉄骨飲料」,7 「おCaさん鉄だって」(のりの佃煮), 8 ひじき,9 カセットテープのテープ,10 ゴム磁石,11 磁気切符
結果は,5,6,7は,黄血塩を入れると黄緑色になって,少しは鉄が入っているのがわかります。4は,青くなって,はっきりと検出されます。9は,見事に溶けて青くなります。1は,まずそのままで,小さく千切って溶かしてみました。それでも黄血塩に対して5,6,7と同様に反応します(青緑になる)。はっぱの部分を灰にしてからやってみても,同じ。次に茎の部分まで灰にして,加熱しながら溶かしたところ,はっきりと青色になりました。
★明治LOVE牛乳の鉄分
「鉄分添加」の牛乳です。黄血塩での反応は,黄色。「鉄骨飲料」と同じです。
「鉄分入りキャンデー」も数種類買って,実験してみましたが,すべて同様でした。
★生徒さんが作業をしました
〈錬金術入門〉の授業も終り,最後に生徒さん達に作業をしてもらいました。いろいろなものを金属溶解液に溶かしたり,黄血塩を入れたときの反応を見るのです。生徒さん達は,「先生,これは何という色?」の合唱でした。
>>溶かしたもの<<<
ホウレンソウ,金色のタワシ,銀色のタワシ,ひじき,虫ピン,クリップ,ねじ,銅線,釘,亜鉛,鉛,アルミニウム線,アルミホイル,磁気テープ,土,砂,針,はとめ,ニッケル,電池,鍵,金箔,銀箔,アルミリベット,銅リベット,コバルト,画鋲,ヘアピン,半田,リングプル,鉄分入り牛乳,鉄骨飴
1時間ではたりなかったですね。