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《宇宙への道》

惑星1億分の1写真図

開発物語

ホームページ版 99.7.3


北海道・丸山秀一


要約

 《宇宙への道》の授業で,各惑星の1億分の1サイズの写真図を作成して使ってみました。その結果と問題点の報告です。

惑星の写真を見せてあげたくて

 《宇宙への道》を授業するときは,いつも「きれいな惑星の写真を見せてあげたい」と思っていました。そこでいつも図書館からたくさんの図鑑を持ってきて見せていたのですが,使い勝手の良いものではありませんでした。そこで天文に詳しい林秀明さん(北海道・仮説実験授業研究会会員)に「惑星写真のパネルを作って」とお願いしていました。でも今年もこの授業が始まって,「もしかしたら自分で作れるかもしれない」と思って,作ってみたというわけです。というのも,最近のボクはほとんどのことをインターネットを利用して調べたりしています。そこで「惑星のきれいな写真もインターネットにあるのではないか」と思えて探してみたら,これがたくさん見つかったというわけてです。

写真を集める

 

 このようにインターネットには惑星写真がたくさんあるのです。おすすめは圧倒的に簡単なNASAのホームページからのダウンロードです。

 惑星の写真は大きくふたつに分けることができます。それは地球から望遠鏡で撮影したものと,実際に惑星のそばまで行った探査機により撮影されたものです。ボクは,「その惑星の近くに行ったらこんなふうに見える」というのが重要だと思うので,探査機による写真を中心に集めました。でも,探査機は惑星の近くで写真を撮るので,探査機による写真では「惑星全体」というものがない場合があります。その場合は,望遠鏡で撮った写真を使いました。最近は大気の影響を受けない地球の衛星軌道上にあるハッブル宇宙天文台が撮影した写真があるので,なかなかきれいなものがたくさんあります。でも冥王星については,近づいた探査機もなく,望遠鏡でもよく見えないので,残念ながら満足できる写真はありませんでした。

大きく引き伸ばしたい

 授業で惑星の写真を使うからには,大きいサイズのものを使いたくなります。パソコンを使えば,任意に写真を拡大して印刷できますが,大きく拡大すればするほど画像が荒れてしまうので,A4用紙大ぐらいが限界です。しかし,それを解決する拡大印刷用のソフトがあるのです。

 「デイジーズームプリント」 市川ソフトラボラトリー 7800

このソフトを使うと,最大2メートル四方の大きさまで,きれいに拡大して印刷できるのです。そこでこのソフトを使って,A3用紙大の惑星の写真を作成して壁に飾ってみました。

 ずらっと壁にかざられた惑星の写真はみごたえがありました。でも,それぞれの惑星の実際の大きさの比率とまったく無関係な大きさなのが気になってきました。そこで大きさの比率が正しい写真をつくりたくなったのです。

惑星の大きさの比率を同じにしたい

 その比率は何を基準にするかですが,授業書の惑星模型の30億分の1では,惑星が小さすぎて面白味に欠けます。30億分の1で太陽が直径50センチですから,「10億分の1サイズにして,直径150センチの太陽を作ろうかな」と思いましたが,このサイズでも,惑星は小さいままです。そこで授業書の前半の1億分の1というスケールを使ってみることにしました。太陽は15メートルで,ちょっと作るのは無理ですが,最大の惑星の木星なら143センチぐらいで作れそうです。そこで「ものは試し」と木星の写真パネルの作成に取りかかりました。

 

1億分の1写真図の作成と授業

 もっともいくら「ズームプリント」を使ってもプリンターが印刷できる最大の用紙はA3なので,143センチの木星はA3用紙を24枚張り合わせて作ることになります(A4プリンターの場合はその倍の枚数)。プリンターは24枚をε時間かけて印刷し,それを手作業で張り合わせました。印刷の途中で,インクが何度かなくなり取り替えたので,木星の写真図1枚だけでも,4千円ぐらい費用がかかるようです。

 さて出来上がりは壮観のひとこと。さすがにこれだけ拡大すると,ぼやけた感じになりますが,大きい図ほど離れて見るので,きれいに見えます。この成功に気をよくしたボクは,次に土星の写真図の作成へと取りかかりました。

 これまでボクは「木星が一番大きい図になる」と思っていたのですが,土星の写真図を作り始めて,すぐにその間違いに気がつきました。なぜなら土星には大きい輪があるからです。そのため土星はA3用紙32枚で作成することになりました。土星と木星の印刷だけで1万円ぐらい費用がかかる感じです。土星は,やはり輪のために,木星よりもはるかにインパクトがある写真図となりました。そしてその後,天王星と海王星をA3用紙4枚で作成しました。

 あとの地球型惑星は,一番大きい地球でも直径13センチぐらいですから,1億分の1のサイズでは,すべてがA4用紙1枚の中に収まってしまいました。木星や土星は,地球などと比べるととても大きいのです。

 授業では,これらをすべて黒板に張り付け,地球型惑星の写真はA4用紙に印刷したものを,生徒さんたちにも配りました。「地球ってこんなに小さいんだ」という驚きも多いのですが,一番多かった反応は「本当にこんなふうに見えるの」という声です。「そうだよ,これは実際に行って撮ってきた写真だからね」というと,「そうなんだ。見てみたい!!」との声。

この比率の問題点

 迫力のある1億分の1惑星図ですが,問題点もいくつかあります。それは,このサイズでは,各惑星間の距離が離れすぎていて,イメージしにくいことです。さらにこのサイズの惑星を見せてから,授業書の30億分の1のサイズを取り扱うと,多少の混乱があるようです。授業では1億分の1の図を黒板などに張り付けたまま,30億分の1サイズで「学校に太陽を置いたときの各惑星の位置」の説明をしたので,さらに混乱したようです。ですから,1億分の1のパネルを使う授業では学校を中心にした60キロ(そのサイズで冥王星までの距離)四方の地図を使って説明すると良かったかもしれないと思っています。

 授業書30ぺの「研究問題1」では,1億分の1サイズでの割合が取り上げられていますので,同じように36ぺの「作業」のあとに「研究問題2」として取り上げると良かったかもしれません。いや,それでも授業書の流れは以降も30億分の1サイズで進んでいますから,やはり混乱を与えるだけかもしれません。模倣される方は,この点を十分ご注意ください。

 

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1億分の1地球型惑星写真図」の写真の出所

水星 マリーナ10号 1974 合成写真Courtesy USGS, and NASA *2
金星 マリーナ10号 1974 合成写真Copyright Calvin J. Hamilton *1
地球 アポロ10号 1969  NASA Solar System Lithograph Set *2
月 アポロ17号 1972  NASA Solar System Lithograph Set *2
火星 バイキング1号 1980 合成写真 NASA Solar System Lithograph Set *2
冥王星 ハッブル宇宙天文台 表面模様をコンピューターにより解析した図Courtesy NASA/ESA/ESO *1
   (*1 *2 は,前述のホームページ)

 使用プリンター EPSON PM2000C


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